会社に入ってまずは新入社員研修と称し、社会人としての心構えや、名刺交換の仕方、着座の上座、下座などのマナー研修は通常受けるでしょう。

しかし、営業職に就く者の、営業職のための専門教育を実施している企業がどれほどあるでしょうか?

私の経験上、このような教育を施していた企業は皆無です。

自社の商品内容や新製品の拡販のための教育は実施しているでしょう。

実はほとんどの営業教育が、商品知識や売るためのテクニックで終始しているのが事実です。

つまり、これらは「やり方」の教育をしているわけです。売上を上げるためのやり方です。

ちょっと待ってください。

「やり方」の前に教育すべきことがあるのではないでしょうか。

それは、営業としての「あり方」です。

その企業の営業としての姿勢と言い換えることができるでしょう。

その企業の目指す営業はどんな営業なのでしょうか。

営業担当者は、お客様からどんな営業だと思われるべきなのでしょうか。

これが、営業の「あり方」です。

この「あり方」が明確でないにもかかわらず、「提案営業を目指せ」と言われてもその意味さえ理解されません。ですから、営業現場を見ますと「提案営業」という名の押し売り営業が横行しています。

私も提案営業研修を年間20社以上で実施しますが、いまだに提案営業を研修前に出来ていた会社を見たことがありません。

営業は、契約という到達点を目指して営業活動を行うわけですが、

人間関係構築 → 現状把握 → ニーズ把握 → 提案 → 契約

という階段を確実に上っていくことによって、一定の確率で受注・契約に至るわけです。初回訪問の目的である人間関係構築もままならない状況下で、間違いなく売り込みをしています。研修時のロープレを見ていましたら一瞬にしてわかります。

「提案」はその一歩前段階である「ニーズ」を把握して初めて提案ができます。ニーズが把握できていないということは、提案などできるはずがありません。にもかかわらず、「提案営業」の言う名のもとに自社の商品提案を行っています。これは売り込み以外の何物でもありません。

本来の「提案」はお客様の困りごと、問題・課題を解決する提案を行うことが「提案」であり、たまたまそのお客様の問題・課題の解決に自社の商品がお役に立つならば、結果として売れるだけのことなのです。

この営業のメカニズムを知らずして、押し売りをするわけです。

なぜこのようなことが起こるのかです?

それは、自社の営業の「あり方」を教育していないからに他なりません。

この「あり方」は、自社の営業のスタンスであり、企業の理念につながるものです。

この「あり方」教育ができていないから、営業が希望や自身のビジョンを持った活動ができなのです。

つまり、「あり方」教育は企業人として、営業としての基軸になる教育のことです。

「やり方」の前に「あり方」教育を施すことが、自社の営業の活性化、そして退職率の低下につながります。